逸脱

ニンギョウがニンギョウ (講談社ノベルス)

ニンギョウがニンギョウ (講談社ノベルス)

いまのぼくにはちゃんと読むことはできなかった。
あるいは昔のぼくなら、読むことができたかもしれない。冷静に受け止め、分析する余裕すらあったかもしれない。少なくともドグラ・マグラを読めた頃であれば。
しかしいまのぼくにはできなかった。
SSBでは読み終えたフラグを立てておいたが、しかしそれはページをなぞっただけに過ぎず、本当のところ「読み終えた」わけではない。
狂人には狂人の論理があり、狂人を装った普通人にも普通人を装った狂人にも、それ相応の筋がある。
むろん、これは創作であって本当の狂気かどうかはわからない。創られ、演出され、それなりの出版コードをくぐって世に出た程度の狂気であるが、それでもいまのぼくにはつらい。